復元という制作
ただいま、天井画のトレース中。
絵の具が剥落したり、形が消えてしまっているものもあるので、
復元しながらのトレースとなります。
複数の絵師によって制作されたと思われる江戸末期の天井画。
それぞれの絵師の特徴があって大変興味深いです。
上の絵の作者は力強い描線と画面いっぱいに広がる官能的ともいえるうごめく形が面白いです。
一見単純化しているようで、トレースしてみると、細やかに植物を観察していることが分かります。
下の絵は手馴れたタッチで樹や鳥を描いています。鳥の入り方、枝や葉の勢いが洗練された感じがします。
きっと、水墨画も達者な方なんだろうなと想像します。
絵の復元のことばかりに最初は気をとられていたのですが、
作者の意図や個性を汲み取ることが一番大切なことのような気がします。
遠い昔の複数の絵師の仕事を辿ることは、
必然的に今の自分の仕事を振り返ることになります。
即効性はないかもしれないですが、
自分の足腰を鍛える大切な仕事だなとしみじみ感じています。
一体何人の絵師が集められ、どんな風に仕事を手分けし完成させたのか、
いろいろ想像しながら今日はゆっくり制作を進めます。