句と共に
雑誌『一枚の繪 8月号』の「今月の一句」に作品を添えていただいています。
多くの方に手にとっていただけると嬉しいです。
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小学校低学年の頃、母が勤めに出かけるようになった頃のことを思い出しました。
その頃、夕方になるとぐずりだす妹を連れて、よく近所の公園まで母を迎えに出ていました。ぶらんこに揺られながら、自転車で家に向かって帰ってくる母が、早く公園傍の道の向こうから現れないかなと待っていたものです。
空の色が変わってくると、子ども達だけで外に出かけていることが怖くなってきて。
不安を消すためにわざと大きな声で話をしたり、妹と歌を歌ったりしました。
不安がピークになった頃、私達姉妹の姿を見つけた母が笑顔で遠くから自転車を漕いで現れます。嬉しくて妹と傍まで駆けつけます。そうして公園から家まで、ハンドルに沢山買物袋をぶら下げた自転車を押して歩く母にいろんな話を聞いてもらう、そういう毎日を過ごしていました。
子どもなりに、よじれた鎖のような気持ちを抱えて夕方の公園で母を待っていたのだなと、今になってようやく解かったような気がします。
この句から百人百様の西日の記憶がほどかれたのではないでしょうか。