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植樹の様子を見学に行きました。

岡山光風会展、個展、グループ展、岡山光風会エスキース研究会と、一年分の行事がギュッと詰まったような6月も残すところあとわずかとなりました。
ご来場くださいました皆様、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。


西粟倉に戻って2日目、株式会社百森さんのご案内で、植樹の様子を見学させていただきました。
大変興味深く、勉強になる時間だったので、忘れないうちにメモをアップします。



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2023年6月28日 植樹の様子を見学  (15:00~百森)
 
四年前に植樹を行った比較的緩やかな斜面の様子を見学。鹿避けのネットを開いてもらい中へ。鹿が食べないので、鋭い単葉草が胸の高さまで成長し、先程までのスコールでキラキラ光っていた。よく見ると草花も咲いている。集落のある地域では見かけない白い小さな花がびっしりと詰まった花房。

間伐後の様子の写真と現在の様子を、実際の撮影ポイントから眺める。1ヘクタールあたり3000本になるよう植えられた四歳となる杉は、私達の身長より高いものもちらほら。幹の先っぽは美しい黄緑色。「鹿はこの部分を食べます。このぐらい育ったら、もう鹿は食べません」なるほど。高校生物で習った通り、木は先端を無くすと真っすぐ伸びない。真っすぐ伸びる杉や檜は、幼木の頃から人の手で守られていることを再確認。
 
「鹿が入るとこのあとは、ミツマタしか生えないということですよね。この機会に他の落葉樹を植えるということは無いのですか?」「結局鹿にやられないということは毒性のあるものを植えることになります。それをしてまでの効果は・・・」
 
そもそも、近年の間伐の流れはパリ協定が発端となった。木を植えることで脱炭素を宣言できるブラジル等他の地域に比べ、日本など木が多い国々はどのような行動をすれば良いのか。そこで導き出されたのが「間伐」だ。手を入れている、管理をしていると認められることで、パリ協定に批准しているとみなされるという。そこで日本では間伐には補助金が付き、そして植樹についても同じ「杉・檜」ならば補助金が付く。そこが、現場の人間にはもどかしい所。なぜなら、杉・檜だらけの山がいかに脆弱で、偏った森林資源しか生まないことが経済的にも効果的ではないことを身に染みて実感しているから

 
「道のそば、光が入る部分には落葉樹を植えているんです。杉・檜ばかりの地域はいわば『畑』なんですね。杉檜は大変背が高くなる。20mを超える高さの落葉樹は成長速度も遅く、杉檜の間に植えるのは難しいのでは。なにより、それを植えることでどうなるのか。多様性の森という概念は最近のものです。間伐が必要、植樹もしよう、ではその先は?実はそこがまだない。多様性の森で何が生まれるのか、経済的にどうまわるのか。そこなんです。現在植樹をしているこの場所は緩やかな斜面なので杉檜畑に適しています。しかし山の斜面が急な場所など、杉檜畑に適さない場所もある。西粟倉の森林の30%が広葉樹になればいいのかなと思っています」
 
「では、どんな広葉樹を植えてみたいと個人的にお考えですか?」
「何でも植えてみたいのですが…、メープルですね」
「メープル!?」
「天然林にもカナダの甘いメープルの30分の1程の糖度ではありますが、楓が生えています。以前それを煮詰めて味わったこともあるんですよ」
「メープルを好んで使用していた玩具作家さんがいらっしゃいました。白くて柔らかく削った際の香りもいい」



 
見学をした植樹エリアの道を挟んで向こう側は樹齢70年の檜が立つエリア。列状間伐をした後なので、切り株がズラッと並んでいる。
「この木が70年ということは・・・、今日見たあの木がこの姿になる頃には私達はこの世にいないんですね」
「そうです。私達が植た木は孫の世代で使われます(代飛ばしと呼ばれる)。この地域には学校林もあります。何かというと、学校を改装するときに使うために植えられた木なんですね。ご存じの通り、それは叶わなかったわけですが。
木にはそんな風に『人の想い』や『情』があるんです。間伐は他の人にさせろという言葉があります。自分たちで世話した木、身内が世話した木は、思い切って間伐できないんですね。間伐が3割ぐらい減ってしまうんです。『休みの日、遊びにも出掛けられずずっと下草を刈っていたんだ』という思い出とか」
木に情が移るという感覚があることを初めて知った。次元は違うけれど、思い出の詰まった古い洋服や家具をなかなか捨てられない気持ちとも似ているのかもしれない。古い洋服は場所さえあれば残すことはできる。でも、木は間伐しなくては育たない。1ヘクタール当たり3000本植えても、1500本、1000本と間引いていく。これは目の前の木のことだけではなく、50年後、100年後のことを考えて決断を重ねる力が必要な作業だ。



「自然に落ちた実から目が生え幼木となることがあります。これを実生(みしょう)と呼びます。企業の研修などで山にお招きし、この実生を鉢に植え替え、3年ほど会社で育てていただき、山に戻してもらう活動もしています。また、ふるさと納税納付者に、山にお越しいただき見学をしていただきながら下草刈りを手伝っていただいたりもしています。お金をいただいてその上働いてもいただくという…」

動物は林相(りんそう)の替わる場所に出現するという。針葉樹と落葉樹が入り組む場所。そこには針葉樹で暮らす動物、落葉樹で暮らす動物が現れる。針葉樹だけの森だと生物の多様性は生まれない。
「多様性の森をどうイメージするのか。それは今の経済的な効果だけではだめで、日本全体の森づくりをどうするか、ひいては世界全体のことを考えることですね」
「そうですね。そしてその時その時でニーズは変化します。そこが難しい。安定した森資源とするために、10年の木、20年の木、50年、60年・・・、常に様々な樹齢の木が揃っているようにすることが、杉檜の森づくりで目指しているところです。
 過去10万年の中で現在最も鹿が増えていると言われています。狼が絶滅したからとも言われていますが、人間が猟をしなくなったことが大きい。生態系に変化がでてきています。天然林もナラが枯れています。これは県南で多くナラ枯れを発生させてきたカシノナガキクイムシの一筋がこの地方に現れたから。天然林はここ5〜10年で後戻りできなくなるという実感があります。人のせいで変化した環境です。天然林も人の手で保存に向けて動く必要があるのではないでしょうか。とにかく作業は大変ですが」
鹿を積極的に食べるということも、森のバランスを整えることになるのならと、村のレストランで積極的に鹿肉料理をいただこうと思った。
(写真はBASE101%。山歩きのあとのソフトクリーム等スイーツが美味しかった。)

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