つくること・残すこと②
作品の整理・保存の活動は、おおよそこの4段階を経るのではないでしょうか。
1.関係者全員で、想いを分かち合う場を持つ。
2.片付ける前に記録写真を残す。
3.片付けの具体的なイメージを共有する。
4.作品の行き先を決める。
ここから先は、それぞれについてまとめていきます。
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1. 関係者全員で、想いを分かち合う場を持つ
もし、ご家族や親しかった方が、たくさんの作品を残して旅立たれたとしたら。
作品の整理は、大変な作業になるだろうと誰もが想像することでしょう。残された作品や、制作に使っていたアトリエのことはとても気になるけれど、「私一人では無理かもしれない」と、正直なところ、なかなか行動に移せないかもしれません。私自身もそう感じた経験があります。
しかし、残されたアトリエの作品を目の前にした時、「このまま時間だけが過ぎてはいけない」という強い気持ちになり、具体的な一歩を踏み出すことを決意しました。
生前、故人が一生懸命に制作に没頭する姿を知り、応援してきたご遺族にとっては、生活空間に作品や制作の道具が残っているわけですから、「何とかしたい」というお気持ちは、計り知れないものがあると思います。また、相続など、時間的な制約がある場合もあるかもしれません。
とはいえ、全てをご自身だけで背負い込むのは大変なことです。
ご家族だけで抱え込まず、独断で動く前に、ぜひ最初の一歩として、関係者全員が集まる場を設けてみてください。
【顔合わせ会を設ける対象者(例)】
ご遺族、ご親族
親交の深かった友人、知人
作品に関して問い合わせがあった方
専門的な知識(美術史、法律、保存など)をお持ちの方
会食などをしながら、**ざっくばらんに話をする「顔合わせ会」**としてセッティングするのはいかがでしょうか。
【顔合わせ会のメリット】
後に生まれる誤解を防ぐ:
「聞いていなかった」「勝手に進めている」といった、後々の批判や誤解を防ぐ側面があります。
新しいアイデアや助けが生まれる:
複数人で集まることで、ご自身だけでは思いつかなかった良いアイデアや、想像していなかったありがたい協力のお申し出が出てくることがあります。
たとえ、最初から明るい見通しが立たなくても、くじけないでください。
様々な可能性が議論され、一時的に「八方塞がりだ」と感じるかもしれません。しかし、「検討が必要な事項」が明らかになるだけでも、それは大きな前進です。どこから手をつけるべきか、最初に見つけることができた証拠ですから。
【継続的な相談体制づくりと委任について】
相談相手を持つこと:
遺族だけでは片付けが困難な場合、遺作が大量にある場合、あるいは各種手続きが難しいケースもあるでしょう。この顔合わせの段階で、生前親交のあった方々や相談相手と、LINEグループなどを使って定期的に相談し合える状態にしておくと、精神的な負担が軽減され、スムーズに進みやすくなります。
活動の委任という選択肢:
もし、ご遺族だけで作品の寄贈活動や保存活動を進めることが難しいと感じる場合は、作品保存に関して協力してくれる人(またはグループ)に活動を委任するという方法も選択肢の一つです。 その場合、活動の範囲やルール(規約)を決めておく手間は発生しますが、活動範囲を明確にしておくことは、お願いする方々の負担を軽減することにもつながります。皆さんと相談しながら、無理のない形で進めていきましょう。
(つくること・残すこと③につづく)